【高校 政治経済11】日本の人権問題を詳しく解説(新しい人権編)

新しい人権の規定について新しい人権は何が「新しい」?

日本の人権は前回までに説明してきた「自由権」「社会権」「平等権」のいずれかに基本的には分類されます。というより分類されるように憲法を制定時に作成しました。ただし、その後に保障されるようになった人権は記載されていません。そのような人権を「新しい人権」と言います。言い換えるならば、日本国憲法が1947年に制定された当時には明確に規定されていなかった権利のことです。もちろんこれらの権利は、その後の社会の発展や変化に伴って、新たに保障が必要となった人権です。

つまり「新しい人権」の「新しい」という言葉には、以下の二つの意味が含まれています。

  • 時期的な新しさ:憲法制定時には想定されていなかった、その後の時代の変化に応じて認識された権利であること
  • 解釈的な新しさ:既存の憲法条文の解釈を通じて、新たに権利として認められるようになったこと

具体的には、高度情報化社会の進展によって必要となった「プライバシー権」や、環境問題の深刻化に伴って認識された「環境権」などが、代表的な例として挙げられます。これらの権利は、憲法第13条(幸福追求権)や第25条(生存権)などの解釈を通じて、法的に保護される権利として確立されてきました。それではここからは具体的な「新しい人権」について見ていくことにしましょう。

良い環境を求める「環境権」

環境権とは、健康で快適な環境を享受する権利のことです。この権利は、1970年代以降、公害問題や環境破壊が深刻化する中で、その必要性が認識されるようになりました。具体的には、きれいな空気や水、静かな生活環境、自然豊かな景観などを享受する権利のことです。

環境権の法的根拠としては、憲法第13条(幸福追求権)と第25条(生存権)が挙げられます。これは、良好な環境で生活することが、人間の幸福追求や健康で文化的な生活を送る上で不可欠だというように解釈しています。

環境権の特徴として、以下の3つが挙げられます:

  • 集団的権利としての性質:環境は個人だけでなく、地域社会全体に関わる問題であること
  • 将来世代への配慮:現在の世代だけでなく、将来の世代の権利も保護する必要があること
  • 予防的な性質:環境破壊が起きてからでは回復が困難なため、事前の予防が重要であること

しかし、環境権の実現には非常に特殊な課題があります。環境破壊の因果関係の立証が困難であることや、そのほかにも、経済発展と環境保護のバランスをどう取るかという問題があるため、環境問題がグローバル化する中で、一国だけでなく国際的な取り組みが必要とされています。

そのため、環境権を実効性のあるものにするためには、法制度の整備、行政による適切な規制、市民の環境意識の向上など、多面的なアプローチが必要とされています。

情報を「知る権利」「コントロールする権利」

知る権利とは、国民が政府や公共機関の保有する情報にアクセスし、それを知ることができる権利のことを指します。この権利は、憲法第21条の表現の自由から派生したものとして解釈されており、民主主義社会における重要な権利として認識されています。

情報公開法(行政機関の保有する情報の公開に関する法律)は、この知る権利を具体化した法律です。この法律により、国民は行政機関が保有する情報の開示を請求することができ、行政機関は原則としてそれに応じる義務を負います。これにより、行政の透明性が確保され、国民による行政の監視が可能となっています。

一方、特定秘密保護法(特定秘密の保護に関する法律)は、国の安全保障に関わる特に重要な情報を「特定秘密」として指定し、その漏えいを防ぐことを目的としています。この法律により、防衛、外交、特定有害活動の防止、テロリズムの防止に関する特に秘匿性の高い情報が保護されることになりました。

これら二つの法律は、一見すると相反する性質を持っています。情報公開法が情報へのアクセスを保障する一方で、特定秘密保護法は情報へのアクセスを制限するためです。このバランスをどのように取るかが重要な課題となっており、特定秘密の指定が恣意的に行われないよう、第三者機関による監視や、指定の要件の明確化などの措置が設けられています。

このように、知る権利の保障と国家安全保障の両立は現代社会における重要な課題となっており、適切な制度設計と運用が求められています。

プライバシーの権利は、「知る権利」と密接に関連しながらも、時として対立する関係にある重要な権利です。プライバシーの権利とは、個人に関する情報をみだりに公開されない権利、つまり「私生活をみだりに公開されない権利」として理解されています。この権利は、憲法第13条の幸福追求権から導き出される新しい人権の一つとして認識されています。

プライバシーの権利は、高度情報化社会の進展に伴い、その重要性が一層増しています。特に、デジタル技術の発達により、個人情報の収集、保存、利用が容易になったことで、新たな保護の必要性が生じています。例えば、インターネット上での個人情報の取り扱い、監視カメラによる撮影、GPSによる位置情報の収集など、様々な場面でプライバシーの保護が問題となっています。

一方で、「知る権利」との関係では、時として両者が対立する場面が生じます。例えば、報道機関による事件報道において、被害者や関係者のプライバシーをどこまで公開するべきか、という問題があります。この場合、公共の利益のための「知る権利」と、個人の「プライバシーの権利」のバランスを慎重に判断する必要があります。

このような状況に対応するため、個人情報保護法などの法整備が進められており、個人情報の収集、保管、利用について明確なルールが設けられています。特に重要なのは、個人情報の取り扱いに関する本人の同意の必要性や、情報の目的外使用の制限などの原則です。これらの規制により、プライバシーの権利の実効的な保護が図られています。

私的な事柄は自分で決めたいー「自己決定権」

自己決定権は、個人が自分の生き方や人生に関わる重要な事柄を自分で決定する権利のことを指します。この権利は、憲法第13条の幸福追求権から導き出される新しい人権の一つとして理解されています。自己決定権は、生命、身体、生活様式など、個人の私的な領域における決定の自由を保障するものです。

特に医療の分野では、自己決定権は「インフォームドコンセント(説明と同意)」という形で具体化されています。これは、医療行為を受ける患者が、その治療の内容、予想される効果や危険性などについて、医師から十分な説明を受けた上で、自らの意思で治療を受けるかどうかを決定する権利を意味します。

インフォームドコンセントの重要な要素として、以下の点が挙げられます:

  • 医師による適切な情報提供:治療の内容、効果、リスク、代替治療の可能性などの説明
  • 患者の理解:提供された情報を患者が理解できる形で説明すること
  • 自発的な決定:患者が強制や圧力を受けることなく、自由に判断できること
  • 同意能力:患者が判断能力を有していること

このような自己決定権とインフォームドコンセントの考え方は、患者の人権を守り、医療における患者の主体性を確保する上で重要な役割を果たしています。また、これは医療現場における医師と患者の信頼関係を構築する基礎としても機能しています。

ということで今回は「新しい人権」について説明してきました。次回は人権編最後「人権そのもの」の性質について説明していきます。

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