今回は前回に引き続いて社会権について説明していきます。社会権というのは実はここ100年くらいで新たに認められるようになった基本的な権利の1つなります。次回説明する生存権と、前回説明した自由権だけでは護られない権利が非常に多いため、新たに認めた、というものになります。そのため少しふわふわしているかもしていて、捉えにくいかもしれませんが、具体例を通しながら少しずつ理解していきましょう。
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「社会権」とは何か
社会権は、人々が人間らしい生活を送るために必要な権利を保障するものです。自由権とは「国家からの自由」を保障するための基本的人権のことでした。反対に社会権は「国家による自由」を求める権利のことを言います。したがって「国家に助けてもらうこと」を保障する人権ということになります。より具体的に説明すると、「国家に助けてもらう事柄」をあらかじめ定義しておくことが社会権ということになります。
なぜ社会権が生まれたのでしょうか。社会権が必要となった歴史的背景には、産業革命後の著しい貧困や格差の問題がありました。それ以前にも格差社会は存在しました。しかし産業革命以後、格差の下側にいる人は、自力では生活していけないほどにまで格差が広まってしまったのです。その人々は国家に介入してもらうことで助けてもらおうとしたのです。では次からは具体的な社会権として保障されている権利について確認していきましょう。
生存を保障する
そもそも生存を保障しないと、基本的人権の保障のしようがありません。というわけでそれを保障しているのが生存権です。生存権とは、憲法第25条で保障されている権利で、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と定められています。これは国民の生存のための最低限度の生活水準を保障する権利と解釈することができます。つまり国民が生きていくために最低限必要な資源は、政府が保障しなければならないということを意味しています。生存権を実現するための具体的な制度としては、生活保護制度、社会保障制度(年金、医療保険、介護保険など)、公営住宅の提供などが挙げられます。
生存権の具体的な内容を巡っては、1957年に始まった朝日訴訟が重要な判例となっています。この訴訟は、結核患者の朝日茂さんという人が生活保護を受給していた際に、兄から援助の申し立てがありました。その時に福祉事務所が援助分の額を、生活保護から減額するとしました。ただ、これ肌着を2年に1回1着しか買い替えないとかしないと成り立たない額だったんですね。それで朝日さんが生活保護費の減額処分は憲法25条に違反すると訴えた裁判です。
地方裁判所においては、朝日さんの主張が認められていましたが控訴され、高等裁判所においては認められず。最高裁判所は、生活保護基準が健康で文化的な最低限度の生活水準を下回る場合、それは違憲となる可能性があるという判断を示しました。そしてこの場合は違憲ではないとされたわけです。
生存権の法的性格については、次の2つの考え方があります。プログラム規定説といい、憲法で定められている生存権は国の政策目標を定めた規定であり、具体的な権利ではないとする考え方と、具体的権利説という生存権は裁判所に訴えることのできる具体的な権利であるとする考え方があります。裁判所は前者を基本的には支持していますが、学説上は後者の方が有力であるとされています。
教育を保障する
教育を受ける権利は重要な社会権の一つになります。この時、全ての人が教育を受ける機会を平等に与えられるべきであるという「教育の機会均等の原則」と義務教育は無償で受けられるものだとしています。これは先に説明した社会権の本質である「国家による自由」の具体例となります。つまり、国家が積極的に介入することで、すべての人々の教育を受ける権利を保障しているのです。私して全ての国民が一定レベル以上の学力を有するようにしているのです。
労働を保障する
労働は次の4つの権利で保障されています(総称して労働基本権と言います)。勤労権とは、国が全ての国民が働く権利を保障する、というものです。なお労働条件に関しては、労働三権で保障しています。労働三権とは団結権・団体交渉権・団体行動権のことを言います。団結権が労働組合を作る権利、団体交渉権は労働組合が会社と労働条件について話し合う権利、団体行動権が話し合いで会社と決裂した時にストライキを起こす権利のことを言います。
またこれらの権利を保障しているのが、労働基準法や労働組合法、労働関係調整法ということになります。これらの法律はまとめて労働三法と言ったりします。重要なのが、国の基幹業務を担っている公務員は、これらの法律で労働三権の一部が制限されています。これもいわゆる公共の福祉に配慮してのことです。
政治参加を保障する
国民の政治参加を保障しているのは参政権と言います。主な参政権には、選挙権(投票する権利)と被選挙権(立候補する権利)があります。日本国憲法第15条では「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である」と定められており、また「すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない」とされています。
選挙権については、日本では満18歳以上の日本国民に与えられています。これは2016年に、それまでの20歳以上から引き下げられました。被選挙権については、衆議院議員選挙が満25歳以上、参議院議員選挙が満30歳以上となっています。
参政権の特徴として重要なのは、これが「国民固有の権利」とされていることです。つまり、国家から与えられた権利ではなく、国民が本来的に持っている権利という位置づけです。また、参政権の行使にあたっては、投票の秘密が保障され、投票に関する自由と平等が保障されています。
なお、参政権の制限については、禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わっていない者や、選挙違反で有罪となった者などには、一定期間参政権が制限されることがあります。これは公正な選挙制度を維持するための措置とされています。
国への請求を保障する
請求権とは、国民が国家に対して一定の行為を要求する権利のことです。具体的には、裁判を受ける権利(憲法第32条)、国家賠償請求権(憲法第17条)、刑事補償請求権(憲法第40条)などが含まれます。裁判を受ける権利については、司法権において詳しく扱うことにします。後者の2つについてですが、これらは行政のミスなどに対しての補償ということになります。
国家賠償請求権というのが、公務員の違法行為によって損害を受けた場合に、国や公共団体に対して賠償を求めることができる権利です。具体的には、逮捕されて警察官に暴力を振るわれたなどという状況にこの権利を行使することができます(ちなみにこの警察官は特別公務員暴行凌虐罪に問われます)。刑事補償請求権は、無罪の判決を受けた人が、拘留や拘禁によって受けた損失について、国に対して補償を請求できる権利です。簡単にいうと冤罪で刑務所にぶち込まれていた分は、補償のしようがないのでお金でどうにかしましょうという考え方ですね。これら2つは混同しやすいので注意しましょう。
というわけで今回は社会権について説明してきました。次回は平等権について解説します。

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