【高校 政治経済09】平等権についてわかりやすく解説

今回は日本国憲法で最も重要視されている3つの権利の最後、平等権について扱います。平等権は本来は自由権や社会権に先立って説明されることが多いのですが、ここではあえて最後に扱うことにしました。なぜかというと、平等権が実は一番フワフワしていて捉えどころがわかりにくいためです。というわけで基本原則から確認していきましょう。

なおこれまで扱ってきた、日本の残りの三大権利の記事は以下から飛ぶことができます。

平等権というが

平等権は、日本国憲法が保障する最も基本的な権利の一つとされています。この権利は、すべての国民が法律の前で平等に扱われ、差別されることなく基本的人権を享受できることを言います。どこから導出されるかというと、憲法13条が由来とされています。憲法13条で「個人の尊重」の原理を定めていることから導出されるとしています。が、平等権は次の14条でしっかり具体的に定義されています。そこでは、人種、信条、性別、社会的身分、門地などによる差別を禁止していることが平等権の根拠となっています。なおこのほかにも男女の平等が24条、選挙における平等が15条3項と44条、教育の機会均等が26条で保障されています。平等権と一言言っても、根拠法はいくつかあることになります。

平等権の歴史的発展

平等権は日本国憲法が保障する基本的人権の一つで、すべての国民が法律の前で平等に扱われることを意味します。

歴史的には、封建社会から近代社会への移行期に、身分制度の廃止や参政権の普遍化などを通じて発展してきました。この権利には「形式的平等」と「実質的平等」という二つの側面があり、単なる機会の平等を保障する形式的平等だけでなく、社会的・経済的な格差を是正するための実質的な平等の実現も重要視されています。

現代社会では特に、ジェンダー平等や障害者差別の解消など、さまざまな分野での平等の実現が課題となっています。憲法第14条では、人種、信条、性別、社会的身分、門地などによる差別が明確に禁止されており、これらの原則に基づいて、より公平で差別のない社会の実現を目指しています。

「平等」の尺度で変わる2つの平等

平等と言っても何を基準に「平等」というかは異なるわけです。もっと簡単にいうと、どこで平すのかによって結果は異なっていくことになります。というわけでここでは2つの平等の定義のしかたを確認していきましょう。

とりあえず平等にすることを考えた方式を「形式的平等」と言います。もっとしっかり定義するなら、個人の能力を考慮しないでとりあえず結果を平等にしようとする考え方です。かけっこで例えるならば、みんなで腕組んで一緒にゴールしよう、という考え方のことです。これだけを書くと、この方法はよくない方法だ、とされがちですが、実はそうでもないわけです。例えば、成人になったら全員に選挙権が与えられます、とかという場合が形式的平等ということになります。つまり誰にでも当然もらえなければおかしいもの、とかの場合にはこの「形式的平等」の原則を行使する必要性があるわけです。

一方もう一つの考え方を、「実質的平等」と言います。これは形式的な平等だけでなく、実際の結果や成果の平等も考慮する考え方です。社会的・経済的な格差や、歴史的な差別により生じた不平等を是正するため、必要に応じて特定の集団に対して積極的な支援や優遇措置を行うことを認めます。例えば、障害のある人に対するバリアフリー設備の整備や、社会的に不利な立場にある人々への教育支援などが、この実質的平等の実現を目指した取り組みとなります。先ほどと同じかけっこに例えてみましょう。これまでスタートラインが人によって違ったので、みんな同じスタートラインに変えましょう、というのが実質的平等の考え方ということになります。

これら二つの平等の考え方の主な違いは、形式的平等が「同じ扱い」を重視するのに対し、実質的平等は「結果の公平さ」を重視する点にあります。現代社会では、形式的平等の原則を基礎としながらも、実質的な平等の実現に向けた取り組みの重要性が増しています。特に、社会的弱者への配慮や、歴史的な差別の是正といった観点から、両者のバランスを取りながら、より公平で差別のない社会の実現が目指されています。

「差別」の定義、合ってますか?

差別という言葉の定義についてここでは説明する必要はほぼありませんが、例外的に次の場合、「差別」とは定義されません。「合理的な理由に基づく区別」の場合です。合理的な区別とは、その区別に正当な目的があり、その目的を達成するための手段として適切かつ必要な場合を指します。なお合理的な理由の例としては、次のようなものがあります。 ・年齢制限:運転免許の取得や飲酒、選挙権などに年齢制限を設けること ・資格要件:医師や教師などの専門職に必要な資格や経験を求めること ・性別による区別:スポーツ競技での男女別カテゴリーの設定 つまりより「差別」よりも大義の理由がある場合に認められるものとなっています。つまり裁判所は、ある区別が合理的か不合理かを判断する際、以下の基準を考慮することになります。 ・その区別の目的が正当であるか ・目的と手段の間に合理的な関連性があるか ・より制限的でない他の手段で目的を達成できないか ・区別により受ける不利益が過度に大きくないか

このように、合理的な区別と不合理な差別を分けて考える必要があります。これができなくなると、平等権もへったくりもなくなります。と言いながらも、社会の変化とともに、何が合理的で何が不合理かという判断基準も変化していくため、基準はどうしても浮動することになります。

積極的差別是正措置(アファーマティブ・アクション)

歴史的に差別を受けてきた集団に対する優遇措置の意義と課題について検討します。

積極的差別是正措置(アファーマティブ・アクション)は、過去からの差別や不平等によって不利な立場に置かれてきた特定の集団に対して、一時的な優遇措置を講じることで、実質的な機会の平等を実現しようとする政策です。この措置は、単なる形式的な平等だけでなく、実質的な平等の実現を目指すものです。

具体的な例として、以下のような取り組みが挙げられます: ・教育機関における特定集団への入学枠の設定 ・企業における女性や少数民族の雇用率の目標設定 ・障害者雇用促進法による法定雇用率の設定 ・女性管理職の登用を促進するための特別プログラムの実施

この措置の意義は、長年の構造的差別によって生じた社会的・経済的格差を是正し、真の機会の平等を実現することにあります。特に教育や雇用の分野では、形式的な機会の平等だけでは、実質的な格差の解消が困難であることが指摘されています。

しかし、この措置には課題も存在します。例えば、逆差別の問題や、能力主義との整合性、措置の一時性をどう判断するかという課題があります。また、この措置が真に必要な人々に届いているかという効果測定の問題も指摘されています。

そのため、積極的差別是正措置を実施する際には、その必要性と合理性を慎重に検討し、定期的な見直しを行うことが重要です。また、この措置は一時的なものであり、最終的には措置がなくても実質的な平等が達成される社会を目指すべきとされています。

現代の平等権に関する社会問題

現代社会における平等権の具体的な課題の一つとして、ジェンダー平等の問題があります。日本では、職場における男女の賃金格差、管理職への女性登用の遅れ、育児・介護負担の偏り、政治分野における女性の過少代表性などが依然として存在しています。これらの課題に対しては、男女雇用機会均等法の厳格な運用、育児・介護休業制度の充実、クオータ制度の導入などの取り組みが進められています。

障害者差別解消の分野では、2016年に障害者差別解消法が施行され、合理的配慮の提供が求められるようになりました。しかし、物理的なバリアフリー化の不十分さ、就労機会の制限、教育環境の整備の遅れ、情報アクセシビリティの課題など、多くの問題が残されています。特に、障害の種類や程度に応じた個別の配慮の実現や、障害に対する社会の理解促進が重要な課題となっています。

外国人の権利に関しては、在留資格制度の複雑さ、言語の壁による行政サービスへのアクセスの困難さ、住宅や就労における差別、子どもの教育機会の確保などが課題として挙げられます。特に、技能実習生の労働環境の改善や、多文化共生社会の実現に向けた地域での取り組みの強化が求められています。これらの課題に対しては、多言語での情報提供の充実、差別禁止法制の整備、教育支援体制の強化などが必要とされています。

これらの課題を解決するためには、法制度の整備だけでなく、社会全体の意識改革や、当事者の声を反映した政策立案、効果的な実施体制の構築が不可欠です。また、国際人権基準との整合性を図りながら、日本の社会状況に即した取り組みを進めていく必要があります。

というわけでこれで日本国憲法で保障されている三大権利について説明が終わりました。ただし、ここからは延長線が待ち構えています。次回は憲法制定後に、憲法解釈などを通じて新たに保障されることになった「新しい人権」について説明していきます。

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