【大学生のための日本政治】第2回 団体・結社の性質と歴史

日本政治論

前回は、「団体政治」はどのように行われるのか、ということについて説明してきました。今回はその「団体政治」はいつから始まりどういう性質があるのか、というよりアカデミックな内容について説明していきたいと思います。

政治を「組織化」するには

[整理]政治団体の重要な要素

政治団体を形成するためには、色々な要素がありますし、それについては前回説明しました。しかしながら最も重要な要素とは何か。それは「目標が一致していること」なんです。そもそも目標が一致するとはどういうことか、みたいな話は前回していますから詳しく述べないとして、目標が一致していることが集団を形成するためには必要なのです。

中学校や高校の修学旅行のグループ割とかだって、一致した目標である「修学旅行」を成功させること、無くしては結成されることはないわけです。ここら辺は社会心理学か何かの学問の領域になるでしょうから、これ以上述べることはしません。ただ人間の自然な働きとしてこのようなことがある、というのを念頭に置いて今後の話を進めたいと思います。

「集合行為問題」で政治団体について考えてみる

それではここでいきなり実験をしたいと思います。

実験

警察はある犯罪の容疑で逮捕した2人の囚人を別々の部屋に隔離して取り調べをしている。しかし、有力な証拠がないため、どちらかの囚人の自白をとらなければならない。そこで警察は、2人の囚人に次のような司法取引を持ちかけた。

  1. 2人とも自白した場合は、それぞれ懲役3年。
  2. 2人とも黙秘した場合は、それぞれ懲役1年。
  3. 1人が自白、もう1人が黙秘した場合、自白した囚人は見返りとして釈放。黙秘した囚人は懲役5年。

この時囚人はそれぞれどのような選択をするのが最善か。

この実験と政治の関係性

知っている人もいるでしょう。これは「囚人のジレンマ」という思考実験です。この実験下で双方の囚人の最も負担が少なくなるのはもちろん2番の場合、一緒に黙秘してそれぞれ1年でムショから出てくるというもの。ただどちらかだけが得をしてでも自分の負担が小さくなるのは3番。でもそれは1番になる可能性も孕んでいる。というジレンマを意図的に作り出した実験です。

これによって生じる問題を大きくしていくと「集団行為問題」という問題になります。どういう問題かというと、ある集団の全員が協力すれば全員が利益を享受できる。でも抜け駆けすれば自分だけより多くの利益を享受することができるわけです。これを実際の組織に当てはめてみると、政治的に圧力団体にとっては非常に都合が悪くなるわけです。

「圧力団体」とはその組織の構成員が少しずつ資源を提供することで、構成員の政治的意見を通そうとする組織のことでした。ではあなたがその組織の一構成員だとしたら…。どうしたいでしょうか。

多くの人は資源を提供せずに利益だけを享受したいと考えるでしょう。そのような人たちのことをフリーライダーと言います。そしてその問題のことを「ただ乗りの問題」と言います。具体的には会社の窓際社員などがこの「フリーライダー」に該当します。圧力団体は団体の性質上構成員の数が大きくない場合、有効には働きませんから、この「集団行為問題」に出くわす可能性が非常に高く、出くわせば団体の運営に深刻な影響を及ぼすことになります。つまり、これを克服する必要性に迫られます。

集団行為問題の克服

集団行為問題を克服するには次の2つの方法があります。

強制加入

強制的に圧力団体への加入をさせれば、入る・入らないの自由はなく、会費などを通して資源を提供させることができますから、「集団行為問題」とは無縁になってしまいます。

例えば日本で言うと弁護士会などが該当します(加入しなければ弁護士としての活動は法令によりできなくなります)。ただしこれがあちこちの圧力団体に適用されることはないでしょう。法的拘束力を色々な団体に適用させれば、それは民主主義の崩壊を意味します(圧力団体はあくまで「政治的意見」を政治に反映させようとする組織でありますから、その色々な団体に政治的なバックがあればきっと政権の思うままに市民を動かすことができるようになるからです)。

選択的誘因

選択的誘因とは、入ることで特典を与えるので入ってください、と言うものです。日本で言えばJAFがこれに該当します。JAFに入れば、レッカーをお安くしますよ、その代わりにお金払って政治的意見を通すことに協力してね、と言うカラクリのことです。

この仕組みの組織を作ると、政治的意見を通すことが目的で入る構成員は少なくなり、特典を得ることを目的に入る構成員が増えるのではないか、と言う批判があります。まあどちらにせよ、政治的意見を通す目的は達成できますから(後者のような構成員からでも資源は取れますから)、どのみち圧力団体単位で考えれば、目的を達成することは可能になるわけです。

結局ここまで色々述べてきましたが、運動をするのにもカネと言う権力が必要になると言うことです。それを得るために、各種の圧力団体はその権力を獲得するために躍起になって活動していると言うわけです。

「圧力団体」史

圧力団体には色々な構成員のものがあります。ただその国その国の風土により、作られやすい圧力団体というものはありまして、そのような団体の特徴を整理していきます。

「圧力団体」の誕生(〜1990年代)

アドボカシー活動とは、デモ活動や署名活動のことを言いました。しかしアドボカシー活動とは人海戦術に近いようなやり方でしか活動を広めることはできませんから、資金も構成員もたくさんなければ活動することができないわけです。

アメリカなどでは、個人が団体に寄付をすると税金が安くなる、寄付税制が充実しているため、アドボカシー活動が盛んに行われています。しかし日本ではないわけではないものの、アメリカほど充実はしていないためあまりこの活動が広がらなかったと考えることができます。

その反面、日本で多く誕生したのが「生産者団体」とか「社会サービス団体」です。前者についてはあまり説明が必要ないでしょう。JAとかJFとかが該当します(JAが農業の生産者団体・JFが漁業の生産者団体)。そして後者が、専門家の団体などが分類されます。

しかしそのように分析されてきたのも、今となっては過去になりかけています。というのも1980年代以降日本を含む様々な国で「アドボカシー団体」や「社会サービス団体」の数が増加しているためです。そして、国際問題を解決するための「NGO」(非政府団体)もこの時代になると増加する様になります。これは飢餓などの国際問題に取り組もうとする団体のことでしょう。

時代はやがて1995年に移り「阪神・淡路大震災」が発生します。この震災ではボランティア活動が活発となったため「ボランティア元年」なんていう言葉もあります。というのも、行政の支援よりも、民間の支援活動・救援活動が盛んな震災となったためです。しかしその反面、そのような民間団体を設立するためには手続きが非常に煩雑でした。それを改善するために、98年に特定非営利活動促進法(通称:NPO法)が成立しました。

「圧力団体」の現代(2010年代〜)

前項では「圧力団体」の誕生について扱いました。前項で実は「圧力団体」の種類についてはほぼコンプリートしているのですが、時事問題的に近年の動きについてさらっていきましょう。

米ミネソタ州ミネアポリスで25日夕、警察に拘束された際に地面に押さえ付けられた黒人男性が死亡した。これを受け、警察官4人が懲戒免職となった。

男性はレストラン警備員としての勤務歴があったジョージ・フロイドさん(46)。

拘束の様子は動画に撮影されていた。フロイドさんはうめき声を上げ、「息ができない」と白人警官に繰り返し訴えていた。

警察は、男性と「警察とのやりとり」の中で「医療事案」があり、男性が死亡したと述べた。男性には紙幣を偽造した容疑がかけられていたという。男性の身元は明らかにしていない。

連邦捜査局(FBI)は、警官らが「憲法や法律で守られている個人の権利を意図的に奪った」かを捜査すると述べた。

(BBC 2020年5月27日記事 https://www.bbc.com/japanese/52816160 より引用)

この事件は記憶に新しいと思います。これによりアメリカでは国論を二分するほどの社会問題となりました。この時に活動した「圧力団体」は存在しません。というのも、「団体」格を持たない”インフォーマルな”圧力団体が増加しているためです。このほかにも「#Me too」運動(性加害をSNSなどで訴える運動のこと)などが、この”インフォーマルな”圧力団体に該当します。

またコロナ禍以降には「Change.org」などのオンラインで署名活動ができるといったサービスも有名になってきました。しかし愛知県知事のリコール署名偽装問題などのこれまでなかった問題が生まれてくるなど、正直混乱を極めているのが現状となっています。

愛知県知事のリコール・解職請求をめぐり、アルバイトを使って署名を偽造したとして地方自治法違反の罪に問われた、リコール活動団体の事務局長だった被告について、2審の名古屋高等裁判所は「1審の判断に不合理な点は認められない」として、1審に続いて執行猶予のついた有罪判決を言い渡しました。

愛知県の大村知事のリコールを求める県民の署名が偽造された事件では、署名活動を行った団体の事務局長だった田中孝博被告(63)が、4年前、佐賀市内でアルバイトを使って署名を偽造したとして地方自治法違反の罪に問われました。
1審の名古屋地方裁判所は「地方自治の運営そのものを揺るがしかねない悪質な犯行だ。自身の政界進出への足場をつくろうなどとする動機も誠に利己的で、厳しい非難に値する」などと指摘して懲役2年・執行猶予4年の判決を言い渡し、被告の弁護士は「リコールを成立させる目的はなかった」などと主張して控訴していました。
6日の2審の判決で、名古屋高等裁判所の田邊三保子裁判長は「1審の判断に不合理な点は認められない。署名の数を抑えようとした形跡はうかがえず、リコール成立の目的があったと認めた1審に誤りはない」として、1審に続いて、懲役2年・執行猶予4年の判決を言い渡しました。

(NHKニュース「リコール署名偽造事件 団体の当時の事務局長に2審も有罪」 https://www3.nhk.or.jp/tokai-news/20241106/3000038326.htmlより引用)

コロナ禍以後、政治の分野ではいろいろなところで混乱を極めてしまっているのが現状です。ただやはり、突拍子もない問題が次々生まれてきているのが現状ですから、一つずつその穴を潰していくしかない、というのも現状となっています。

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