はじめに
民主主義は様々な政治制度の中で実現されています。その中でも特に代表的な2つの政治制度、議院内閣制と大統領制について考察していくことにします。ちなみに前者はイギリス、後者はアメリカで誕生した政治制度になります。少なくとも資本主義のほぼ全ての国はこれら2つと、最後に少しだけ扱う「半大統領制」のいずれかとなるはずです。
民主主義の概念をそれぞれ違うように考察した結果が今の政治制度です。それを念頭に入れながら考えると、面白いのではないでしょうか。
復習 権力分立論
政治経済の一番初めでやる内容ではありますが、ここでの「議院内閣制」と「大統領制」はモンテスキューの権力分立論に由来しているため、ここでサラッとだけ復習しておきましょう。
政治権力は、議会が誕生する前、国王が全権を握っていたとされます。それを独裁政治を防ぐために分けることにしました。分けた結果は以下の通りです。

それぞれの詳しい内容については、以下のページでご確認ください。
議院内閣制とは
議員内閣制は、立法府(議会)と行政府(内閣)が密接に連携して政策を進める政体形式の一つです。この制度は、イギリスで最初に導入され、日本やイタリアなどをはじめとする多くの国で採用されています。
議院内閣制の特徴的な要素は、行政権者(政府)が立法機関(議会)から選出されることです。抽象的に考えるならば、議会の信任に政府は依存しているということになります。具体的には、内閣(首相と閣僚)は議会の多数派(通常は与党)から選ばれ、議会(特に下院)の信任によって成立します。これにより、政府と議会は密接に連携し、政策決定とその実行をスムーズに進めることが可能となります。
※ 現在の日本の制度では、民間人材活用のために閣僚の過半数までは、国会議員以外から選んでも良いことになっています。(内閣総理大臣は必ず国会議員でなければなりません)
議院内閣制では議会が内閣に対して信任投票を行う権限を持ちます。これは、内閣が議会の信任を失う(つまり、議会の多数派が内閣の方針に反対する)と、内閣は総辞職するか議会を解散して新たな選挙を行う必要があります。これは簡単にいうと、三権分立が厳密には分かれていないことになります。
しかし、議院内閣制には批判もあります。例えば、内閣が議会の多数派に依存するため、少数派の意見が軽視されやすい、一部の強力な政党や政治家が長期にわたって権力を握りやすいなどの問題点が指摘されています。これらの問題に対処するためには、各政党の公正な競争、選挙制度の適切な設計、メディアの監視などが求められます。
大統領制
大統領制は、行政権を有する大統領が国民の直接選挙により選ばれ、立法府とは独立して行政を行う制度です。アメリカがこれを代表的に採用しています。大統領制の特徴は、大統領が国民直接の選挙により選ばれるため、国民の意思が反映されやすいことです。また、大統領制では立法、行政、司法の三権が厳格に分立している構造となっていて、各権力が他の権力を抑制し、権力の濫用を防ぐ「チェック・アンド・バランス」が機能しやすくなっています。大統領は行政府の長であると同時に、国家の元首でもあるため、外交権を持ちます。
ただし大統領は議院内閣制の首相と異なって、議会にはあまり関与ができない形となっています。例えば、上院下院ともに、国会議員と大統領は兼務できませんし、もちろん議会で法案提出権も解散権も持ちません。その代わり議会に政策などを示す「教書」を送付することができます。その他の部分は議院内閣制とそこまでの変わりはありません。
その他の主要な政治体制
ここでは、「議院内閣制」でもなく「大統領制」でもない国における特異な政治体制をいくつか紹介します。
中国「民主的権力集中制」
お隣の国、中国では「民主的権力集中制」というかなりイレギュラーな政治体制が取られています。中国は、「民主主義」ではなく「社会主義」の国であり、生産手段の社会的所有、つまりいわゆる「資本」(工場における機械のような生産必要なものー詳しくは「経済分野」で扱います)を政府が所有しています。
したがって一応は「民主的な政治体制」になっているものの、実際は中国共産党が一党独裁をし続けている状態になります。一応キーワードとなるのが中国の立法機関である「全国人民代表大会」が、定期テストなどで頻出になっているので押さえておきましょう。
フランス「半大統領制」
半大統領制は、フランスなどで導入されています。このような国では首相と大統領が両方存在することになります。簡単に言うなれば、「議院内閣制と大統領制のハイブリッド型」こそが「半大統領制」ということになります。
大統領はまず、国民から選出されます。その後大統領が下院の議員から首相を任命して、内閣を組閣することになります。その中で大統領が行政権の一部を行使し、残りは首相が行使することになります。ただし実際に普段のニュースで外交などをしていると報道されるのはほとんどの場合「首相」です。
現代政治のあゆみ
ここまでは、戦後すぐまでに形作られたいわゆる「古典的な政治体制」について扱ってきました。ここからは最近70年くらいの主要な政治体制の変化についてざっと扱うことにします。
中東のイスラム諸国の話です。ここ数十年前まで王政が敷かれてきましたが、近年変化が見られてきています。国王を追放した上で、イスラム教の指導者が政治の実権を握るという特異な政治体制が敷かれてきました。これが如実に現れている例が1979年に国王が追放されたイランということになります。
同時代のアジアに目を移してみましょう。1980年代以降BRICSなどという言葉が表すように、信じられないスケールでアジアが経済成長を遂げました。その背景には、欧米的な自由や民主主義を否定して、経済成長を実現しようとする「開発独裁」という政治体制がありました。やがて豊かとなった一般市民の、政治的自由を求める運動により民主化が実現しました。
また話が変わります。2010年ごろからは中東諸国においてもアジアと同じような政治的自由を求める一般市民による、抗議活動やデモがみられました。その流れを「アラブの春」と言います。その流れでチュニジアやエジプトで独裁政権が転覆することとなりました。それにより政治的な混乱は継続し、ISなどのテロ集団による支配などがみられました。つい最近では2024年末にシリアのアサド政権が転覆したことは、記憶に新しいでしょう。

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